それは梅雨時のことでした。丹精込めて育てていたプランターの葉物野菜が、毎朝のように何者かに食べられているのです。最初は鳥か虫かと思いましたが、ある雨上がりの早朝、犯行現場を目撃してしまいました。プランターの縁や葉の上に、大小さまざまな蛞蝓(ナメクジ)が群がり、一心不乱に柔らかな葉を食べていたのです。その数と光景に、思わず背筋が凍りました。これは放置できないと、私と蛞蝓との長い駆除の戦いが始まったのです。まず試したのは、最も手軽な方法、見つけ次第、割り箸で捕獲して捨てるという原始的な作戦です。雨上がりや夜間に懐中電灯を持って庭を巡回し、丹念に捕まえ続けました。しかし、捕っても捕っても、翌日にはまた新しい個体が現れます。まるで無限に湧いてくるかのようでした。次に投入したのが、ビールを使った罠です。空き缶や浅い容器にビールを少量入れ、庭の数カ所に設置しました。蛞蝓はビールの匂いに誘われて容器に入り、溺れてしまうという仕組みです。これはある程度の効果があり、毎朝、容器の中には数匹の蛞蝓が入っていました。しかし、庭全体の蛞蝓を根絶するには至りません。見た目もあまり良くないのが難点でした。そこで、市販の蛞蝓駆除剤(誘引殺虫剤)を試してみることにしました。パラパラと撒くタイプの顆粒状の薬剤で、蛞蝓がこれを食べると効果を発揮するというものです。これをプランター周りや、蛞蝓がよく出没する場所に撒いてみました。すると、翌日から明らかに蛞蝓の数が減り始めたのです。地面には駆除剤を食べた後の蛞蝓の死骸がいくつか見られました。効果は高いようですが、薬剤なので、小さな子供やペットがいる場合は注意が必要だと感じました。我が家にはいませんが、使用場所を選ぶ必要がありそうです。駆除と並行して、予防策も講じました。プランターの周りに銅線を張る(蛞蝓は銅イオンを嫌うらしい)、コーヒーかすを撒く、木酢液を薄めてスプレーするなど、様々な民間療法も試しました。どれが決定的な効果を発揮したかは断言できませんが、これらの対策を複合的に行った結果、数週間後には、あれほど悩まされていた蛞蝓の被害は劇的に減少しました。蛞蝓駆除は根気と、様々な方法を試す試行錯誤が必要だと痛感した経験でした。