夏のアウトドア活動中に、しつこく付きまとってくる黒っぽい虫、それが虻(アブ)です。蚊や蜂と並んで、人々に嫌われる虫の代表格と言えるでしょう。しかし、虻と一口に言っても、その種類や生態は様々です。まずは、この厄介者の正体について詳しく見ていきましょう。虻は、ハエ目(双翅目)アブ科に属する昆虫の総称です。世界中に多くの種類が生息しており、日本でもウシアブ、アカウシアブ、イヨシロオビアブ、キンイロアブなどがよく知られています。体長は種類によって異なりますが、多くは1センチメートルから2.5センチメートル程度で、ハエに似たずんぐりとした体型をしています。複眼が大きいのも特徴の一つです。多くの人が虻を恐れる最大の理由は、その吸血行動にあります。しかし、注意すべきなのは、全ての虻が吸血するわけではなく、また吸血するのは産卵期のメスに限られるという点です。メスは産卵に必要なタンパク質を摂取するために、人や牛、馬などの哺乳類の血を吸います。一方、オスや非産卵期のメスは、花の蜜や樹液などを主な栄養源としています。虻の吸血方法は、蚊のように細い口吻を刺すのではなく、皮膚をナイフのような口器で切り裂き、流れ出てきた血を舐め取るというものです。そのため、刺された(咬まれた)瞬間にはチクッとした鋭い痛みを感じ、出血を伴うことも少なくありません。傷口から細菌が入り、腫れや痒みが長引くこともあります。虻の幼虫は、湿った土壌や水辺、腐敗した有機物の中などで育ちます。種類によっては、他の昆虫の幼虫を捕食するものもいます。成虫は、主に夏場、特に日中の暑い時間帯に活発に活動し、水辺や牧草地、森林などでよく見られます。二酸化炭素や体温、動きなどに反応して獲物を探し出すため、人間が野外で活動していると、しつこく追いかけてくるのです。虻の種類や生態を知ることは、適切な対策を講じるための第一歩となります。彼らの特徴を理解し、夏のレジャーを安全に楽しむための知識を身につけましょう。
夏の厄介者虻の生態と種類