アシナガバチは、スズメバチほど攻撃的ではないものの、人家の軒下など、私たちの生活空間に巣を作ることが多く、刺されれば激しい痛みを伴う、身近で注意すべき蜂です。彼らの活動時間を理解し、適切な距離感を保つことが、共存のための鍵となります。アシナガバチも、他の多くの蜂と同様に昼行性です。彼らの一日は、気温の上昇と共に始まります。春から夏にかけては、おおよそ午前8時頃から活動を開始し、餌集めや巣作りに勤しみます。活動のピークは、気温が高くなる日中の時間帯、午前中から午後2時頃まで続きます。この時間帯は、巣の周辺を働き蜂が頻繁に行き来するため、巣の近くでの作業や、洗濯物の取り込みなどには注意が必要です。夕方になり、気温が下がってくると、彼らの活動は鈍り始め、日没までにはほとんどの蜂が巣に戻り、休息に入ります。スズメバチと比べると、活動を開始する時間がやや遅く、終了する時間も早い傾向にあります。また、少しの雨や曇り空でも活動が鈍くなるなど、天候の影響を受けやすいのも特徴です。しかし、アシナガバチに関して特に注意すべきなのは、巣に近づいた際の反応です。彼らは巣から1メートル以内の範囲を「防衛ライン」としており、この中に侵入すると、たとえ何もしなくても威嚇してくることがあります。カチカチと顎を鳴らしたり、羽を震わせたりするのがそのサインです。この警告を無視してさらに近づくと、一斉に攻撃に転じます。つまり、彼らが活発に活動している日中に、うっかり巣の防衛ラインに踏み込んでしまうことが、最も危険な状況を招くのです。アシナガバチの活動時間を知ることは、彼らの「プライベートな時間」を尊重し、刺激しないための知恵です。彼らが活発に働いている日中は、巣がありそうな場所には近づかない。このシンプルなルールを守るだけで、アシナガバチとの不幸な事故の多くは防ぐことができるのです。