あれは去年の夏、庭の家庭菜園での出来事でした。毎年、夏になると蚊に悩まされるため、その年はインターネットで評判の良かった手作りのハッカ油スプレーを愛用していました。水とエタノールにハッカ油を数滴垂らしただけのシンプルなものですが、蚊に対する効果はてきめんで、その清涼感も気に入っていました。その日も、トマトの世話をする前に、腕や首筋にたっぷりとハッカ油スプレーを吹き付けて作業を始めました。しばらくすると、「ブーン」という、これまで聞いたことのないような重低音の羽音が聞こえてきました。顔を上げると、一匹の大きなオオスズメバチが、私の頭の周りを旋回していたのです。最初は偶然だろうと思いましたが、スズメバチは飛び去る気配がなく、むしろ私を威嚇するかのように、カチカチと大顎を鳴らし始めました。恐怖で体が凍りつきましたが、ここで下手に動けば襲われると思い、ゆっくりと後ずさりしながら、静かに家の中へ避難しました。幸い、刺されることはありませんでしたが、窓から外を見ると、そのスズメバチはしばらく私のいた場所の周りを飛び回っていました。あの時、スズメバチが明らかに私に興味を示し、警戒していたのはなぜだったのか。後から調べてみて思い当たったのが、あの時使っていたハッカ油スプレーでした。「ハッカ油がスズメバチを刺激する」という噂は知っていましたが、まさか自分が体験するとは思ってもみませんでした。科学的な因果関係はわかりません。汗の匂いに反応したのかもしれないし、私の動きが気に障ったのかもしれません。しかし、あの時、私の体から強く香っていたハッカ油のツンとした匂いが、スズメバチの警戒心を煽り、攻撃の一歩手前まで興奮させてしまった可能性は、否定できないと感じています。この体験以来、私は庭仕事をする際には、ハッカ油の使用を一切やめました。手軽で自然な虫除けも、相手がスズメバチとなれば話は別。その危険性を、身をもって学んだ出来事でした。