数ある蜂の中でも、最も攻撃性が高く、私たちの生活に大きな脅威を与えるスズメバチ。彼らの活動時間を正確に把握することは、深刻な被害を未然に防ぐために不可欠です。スズメバチの活動は、一日のサイクルと年間のサイクル、二つの時間軸で考える必要があります。まず、一日の活動サイクルです。スズメバチも基本的には昼行性で、日の出と共に活動を開始し、日没と共に巣へ戻ります。しかし、他の蜂と比べて活動を開始する時間が早く、終了する時間が遅い傾向にあります。特に、気温が高い夏場は、早朝のまだ薄暗い時間から活動を始め、日没後もしばらくは活動を続けることがあります。活動のピークは、気温が最も高くなる午前10時頃から午後3時頃です。この時間帯は、働き蜂が最も活発に餌探しを行い、巣の周辺の警戒も厳しくなるため、最も危険な時間帯と言えます。次に、年間の活動サイクルです。春、冬眠から目覚めた女王蜂が単独で巣作りを始めます。この時期はまだ個体数も少なく、比較的おとなしいですが、夏になると働き蜂が羽化し、巣は急速に拡大します。7月から8月にかけて、働き蜂の数は増え続け、巣の防衛本能も徐々に高まっていきます。そして、最も警戒すべきなのが、9月から10月にかけての秋です。この時期、巣は最盛期を迎え、働き蜂の数は最大になります。さらに、次世代の女王蜂を育てるための重要な時期であるため、巣全体が極めて神経質かつ攻撃的になります。些細な刺激でも猛烈な集団攻撃を仕掛けてくることがあり、スズメバチによる刺傷被害が最も多く発生するのもこの季節です。この時期に山に入る際や、庭の手入れをする際は、最大限の注意が必要です。スズメバチの活動時間を知ることは、彼らのテリトリーに踏み込むべきではない「危険な時間」を知ることです。夏の午後と、秋全般。この二つのキーワードを、安全対策の基本として心に刻んでおくべきでしょう。