万が一、ムカデに咬まれてしまった場合に備えて、正しい応急処置の方法を知っておくことは非常に重要です。ここでは、その手順と注意点について解説します。まず、ムカデに咬まれたと気づいたら、すぐにその場から離れ、安全を確保してください。パニックにならず、落ち着いて行動することが大切です。次に、咬まれた箇所をできるだけ早く、流水で十分に洗い流します。石鹸を使って優しく洗うのも良いでしょう。これは、傷口に付着している可能性のある毒液や細菌を洗い流すためです。この時、傷口を強くこすったり、揉んだりしないように注意してください。ムカデの毒は熱に弱い性質があるため、43℃~46℃程度のお湯で温める(温熱療法)のが効果的とされています。これは、毒の主成分である酵素タンパク質を熱で変性させ、その働きを失わせることを目的としています。洗面器などにお湯を張り、患部を10~20分程度浸すか、温かいシャワーを当て続けるなどの方法があります。ただし、火傷しないように温度管理には十分注意が必要です。熱すぎるお湯は逆効果になるだけでなく、火傷のリスクを高めます。温度計で測るか、手で触れて「少し熱いけれど我慢できる程度」を目安にしてください。温熱療法が難しい場合や、行った後も痛みが続く場合は、冷やす(冷却療法)ことで痛みや腫れを和らげることもできます。保冷剤や氷嚢などをタオルで包み、患部に当てます。温めるか冷やすかについては、状況や個人の感覚によって判断が分かれることもありますが、基本的には温熱療法が推奨されています。応急処置と並行して、抗ヒスタミン成分やステロイド成分が含まれた軟膏(虫刺され用など)があれば塗布します。これにより、痒みや炎症を抑える効果が期待できます。絶対にやってはいけないのは、毒を口で吸い出すことです。口の中に傷があった場合、そこから毒が吸収されたり、傷口に細菌が入ったりするリスクがあります。また、アンモニア水を塗るという民間療法も、効果がないばかりか皮膚への刺激となるため避けるべきです。これらの応急処置を行っても、痛みが非常に強い場合、腫れが広範囲に及ぶ場合、吐き気やめまい、呼吸困難などの全身症状が現れた場合(アナフィラキシーショックの可能性)、あるいは咬まれたのが小さな子供や高齢者、アレルギー体質の方である場合は、速やかに医療機関(皮膚科や救急外来)を受診してください。
要注意!ムカデに咬まれた時の応急処置