アリの巣の繁殖能力を断つためには、女王アリの駆除が最も効果的であることは事実です。女王アリがいなくなれば、新たな働きアリは生まれず、いずれ巣は活動を停止します。しかし、実際にアリ駆除を行う上で、「女王アリを狙う」という戦略が常に最善かというと、一概にはそうとも言えません。その理由と、より現実的な対処法について考えてみましょう。まず、前述の通り、女王アリを直接見つけ出して駆除することは非常に困難です。女王アリは巣の奥深くにいるため、巣の場所を特定し、そこまで到達すること自体が大きなハードルとなります。下手に巣を刺激すると、かえってアリを広範囲に散らしてしまい、被害を拡大させてしまう可能性すらあります。したがって、一般家庭で「女王アリを直接狙う」というのは、あまり現実的な方法ではありません。では、どうすれば良いのでしょうか。現在のアリ駆除の主流となっているのは、ベイト剤(毒餌)を用いた方法です。これは、働きアリに毒餌を巣まで運ばせ、女王アリを含む巣全体の仲間に行き渡らせることで、間接的に女王アリを駆除し、巣を崩壊させることを目指す戦略です。この方法であれば、女王アリの居場所を特定する必要がなく、巣がどこにあっても効果が期待できます。つまり、「女王アリを直接狙う」のではなく、「働きアリを利用して、間接的に女王アリ(と巣全体)にダメージを与える」という考え方が、より現実的で効果的なアプローチと言えるでしょう。ただし、ベイト剤を使用する際には注意点もあります。効果が現れるまでに時間がかかること、アリの種類によっては効果が出にくいベイト剤があること、設置場所を工夫する必要があることなどです。また、ベイト剤の効果を待つ間にも、家の中に侵入してくるアリへの対処は必要になります。侵入経路を特定し、物理的に塞ぐことや、室内を清潔に保ち、アリの餌となるものをなくすといった基本的な対策も並行して行うことが重要です。結論として、アリ駆除の最終目標として女王アリの駆除を意識することは有効ですが、その手段としては、直接狙うのではなく、ベイト剤などを活用した間接的なアプローチと、侵入防止や清掃といった基本的な対策を組み合わせることが、最も現実的で成功率の高い方法と言えるでしょう。