アリの巣は、高度に組織化された社会を形成しており、その中心にいるのが女王アリです。女王アリの主な役割は産卵であり、巣の構成員である働きアリや兵隊アリを生み出す唯一の存在です。また、女王アリは特殊なフェロモンを分泌し、巣全体の秩序を維持し、働きアリたちの行動をコントロールする役割も担っています。では、もし何らかの理由でこの重要な女王アリを殺してしまったら、アリの巣はどうなってしまうのでしょうか。結論から言うと、女王アリを失ったアリの巣は、多くの場合、緩やかに衰退し、最終的には崩壊へと向かいます。まず、新たな働きアリや兵隊アリが補充されなくなるため、巣の労働力が徐々に減少していきます。怪我や寿命で死んでいくアリがいる一方で、新しいアリが生まれてこないため、巣の規模は縮小せざるを得ません。餌の確保や巣の維持・修繕、外敵からの防御といった活動も、次第に滞るようになるでしょう。さらに、女王アリが分泌していた統率フェロモンが失われることで、巣の秩序が乱れ始める可能性もあります。働きアリたちは目的を失い、統制の取れた行動ができなくなるかもしれません。一部のアリは、自らが産卵を試みることもありますが、女王アリのように受精卵を産むことはできないため(未受精卵からはオスアリしか生まれないことが多い)、巣の存続には繋がりません。ただし、アリの種類によっては、複数の女王アリが存在する「多女王制」の巣もあります。この場合、一匹の女王アリが死んでも、他の女王アリがいれば巣は存続することが可能です。また、非常に稀なケースですが、条件が整えば、働きアリの中から新たな女王アリ候補が分化することもあると言われています。しかし、一般的なアリの巣においては、女王アリの死は、そのコロニーにとって致命的な出来事となります。残された働きアリたちは、しばらくの間は活動を続けるかもしれませんが、新たな世代が育たない以上、巣の未来はありません。女王アリがいかにアリ社会の根幹を支える存在であるかが、このことからもよく分かります。
女王アリを失ったアリの巣の行く末